私好みの新刊 2019年1月
『絶滅どうぶつ図鑑』 ぬまがさワタリ/絵・文 PARCO出版
中を開くとイラストが多く最近はやりの「〇〇〇〇な生き物」シリーズかと
思われる仕様だが、中の解説は要点がきちっとまとめられている。新生代第三紀、
第四紀の生き物で絶滅した種を77種取り上げている。主に哺乳類、鳥類だが、こ
んなにも絶滅しているのかとまず驚かされる。新生代は哺乳類が数を増やした時代
であるが、第三紀では、デスモスチルス、ミアキス、メガロドンなど20あまりが
絶滅している。最初に紹介されているアンブロケトゥスは大地を歩いていた太古の
クジラとか。地球全体が寒冷化してくる中で絶滅していった。第四紀は氷期と間氷
期が繰り返す気候になった。この時期には霊長類が出てくるが、更新世でもギガン
トピテクス、ケナガマンモス,ナウマンゾウなど巨大哺乳類や鳥類など20種以上も
絶滅していた。これらは寒気の影響で絶滅に追いやられる種もあった。ヒトの狩猟
による絶滅も数を増していた。次は1万年前から現在までの完新世の時代に入る。
温暖化になったことで草原がなくなり大型の哺乳類は絶滅したと同時に、人類の自
然破壊などさまざまな環境変化で絶滅する個体も多くなった。オオウミガラス、オ
オツノシカ、ニホンオオカミ、フクロオオカミ、ジャワトラ、ニホンカワウソなど
30数種が出てくる。
最後に著者は「現在は六度目の大絶滅期」として「人類を含むすべての種が絶
滅の危機にさらされている」とまとめを書いている。今迄にも地球は5回の大絶滅
期をくぐりぬけてきた。それら絶滅の主な要因は火山噴火や気候変動、隕石の衝突
などにあったが、今直面している絶滅の要因は、「人間活動による自然破壊や地球
温暖化にある」としている。「あとがき」でさらに著者は訴えている。「人間は〈知性〉
によって、地球でいちばんロクでもない生き物になってしまったと同時に、また
〈知性〉によって、地球で一番ナイスな生き物になれる可能性を秘めています」と。
これからの人間の人知性に期待して本を締めくくっている。
2018,10刊 1,000円
『サナギのひみつ』 三輪一雄/著 ポプラ社
本のタイトルは『サナギの秘密』であるが全体的には昆虫進化のなぞときの本であ
る。この本で取り上げられている完全変態の昆虫は、若葉を食べていた幼虫からサナ
ギに変身して、サナギから出てくる時は空を飛び回る成虫へと激変の転換をする。そ
の激変の要因となるサナギの中では「破壊と創造のせめぎあい」が起きているという。
いったいどのようなことがサナギの中で起きているのだろうか、その謎にせまってい
る本である。
最初に不完全変態のコオロギが出てくるが、完全変態をする昆虫は意外と多い。チ
ョウやトンボのほか、テントウムシやホタルもいる。ここから古生代の生き物誕生の
話が始まる。カンブリア紀の生き物大爆発の時代を迎える。約4億年前には昆虫が生
まれ、巨大トンボが飛び回っていた。やがて、台頭してきたは虫類の格好の餌となっ
て昆虫類は窮地に追い込まれる。そこで昆虫類はやむなく小さな卵をたくさん産む戦
略に出る。すると「似ても似つかないよわよわしい生き物」が誕生することになった。
そのよわよわしい生き物から成虫に変身することは無理なので、その中間の「かけ橋」
としてサナギが誕生したという。そのサナギの中は・・なんと栄養たっぷりのどろど
ろスープ。そのどろどろスープからはおよそ1か月で脳や心臓、消化器、肛門など成
体の組織が形作られていく。なんと、神秘な世界のことか。この時期うまいぐあいに
花開く被子植物が台頭してくる。花の蜜は栄養ドリンクのようなもの、昆虫類はわが
世の春が来たかと思いきやそうは自然界は甘くない。鳥類や哺乳類に捕食される運命
になる。でも、ここで虫たちは負けてはいない。擬態という戦略で生き延びていく。
隕石の衝突で地球に降りかかった災難も、その後の寒冷化の中でも、完全変態の昆虫
類はサナギがあることでのりきってきたとか。昆虫どうしのせめぎあいもある。寄生
バチの標的をくぐりぬけて今もこの空に飛んでいるチョウやガたちがいる。
2018,6 刊 1,500円